狩猟や漁労、採取を中心とするアイヌ文化や生活様式からすると、元々土地を所有するとか漁業権・入会権などの習慣や制度はありませんでした。 その結果、15世紀以降の和人の侵略によって、次々と奪われ排除されていきました。 明治に入ると、明治政府の一方的な同化政策によってアイヌ民族は「旧土人」として位置づけられ、民族としてのこれまでの生活様式などが全て廃止されました。 また、仕掛け弓矢の禁止(1876年)、鮭漁の禁止(1878年)、鹿猟の禁止(1889年)など生活に関わることが奪われていきます。また、1899年には「北海道旧土人保護法」が制定され、居住地すら官有地にされていたアイヌ民族に土地が「貸与」されましたが、そのほとんどが全く農耕地に適さないものでした。 つまり「保護」の名のもとに搾取と抑圧が正当化されてたのです。 さらに、屯田兵などによる移住者の急増に伴ってアイヌ民族の生活はさらに圧迫され「差別」が強化されました。 そしてこのことが、現在の厳しい実態として続いていきました。 さて、1899年に制定された「北海道旧土人保護法」が厳しい国内外の批判の中で、1997年4月の「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統に関する知識の普及及び啓発に関する法律」の成立と同時に廃止されました。 しかし、新しく制定された法律は、アイヌ民族が求めた「先住権」は含まれていませんでした。 |
先住権とは一般的に「先住民族が居住する、または居住していた土地と、そこにある資源に対する権利、伝統文化を維持し発展させる権利、さらに一部には政治的自決権をも包含する内容の権利」といわれています。 世界的に先住民族の権利を保障するために議論になっており、土地の返還とか保護区の設定などの取り組みがおこなわれています。 |
アイヌ民族は、生活・労働に関わって全般的に非常に厳しい実態にあります。そして、結婚・恋愛や就職、学校での被差別体験(46%)を訴えています。 アイヌ民族は、いうまでもなく日本の先住民として固有の歴史と文化、言語と生活習慣をもった民族です。 この民族のアイデンティティを無視した多数の押し付けによる同化は、まったくの誤りであり差別行為です。 アイヌ民族に対する差別をなくすためには、正しい教育と啓発と同時に、アイヌ文化の振興と経済など、さまざまな対策が必要です。 そしてそのことは、新たな共生の時代を築くためには、絶対に不可欠な条件なのです。 |