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朝田教育財団第28回同和教育研修会に参加して
山本 敏明(和歌山市学力支援推進教員連絡協議会会長)


7月2日(金)、京都・ホテルオークラで、朝田教育財団の第28回同和教育講演会がひらかれた。
今回の講師は、小森龍邦・元部落解放同盟中央本部書記長であった。
最近はあまり表舞台に登場しないため、久しぶりにお話が聞けると思い楽しみにしていた。
高齢になっておられるかなと思っていたが、講演が始まると以前のように広島弁で熱っぽく語られ懐かしく感じられた。

演題は「解放理論とは何かー再び『三つの命題』を考える」というものであった。
この演題にも懐かしいものを感じ、また胸の奥に燃えるような思いも感じた。
私が、解放運動に参加したとき「三つの命題」を理解するために必死になっていたことを思い出した。
小森元中央書記長は、現在の解放運動の停滞と混乱を嘆かれ、あらためて「三つの命題」の大事さを説かれた。
理論のない運動は、「行き当たりばったりの運動」になり、しっかりした理論は、その運動のめざす方向をきちんと指し示す「羅針盤」になると述べられていた。
実際に「三つの命題」の学習運動がおこなわれていた70年代の解放運動は、大きく前進し、その理論についてあまり触れなくなってきてから、組織にいろいろな問題が出て、運動も行き詰まり感が出てきたように思う。

「三つの命題」とは何か。
古くからの活動家ならみんなが知っていると思う。
ここで私が説明するまでもないかもしれない。
しかし、若い人たちは聞いたことがあっても内容まではあまり知らないのではないか。
ひょっとしたらその必要性も感じていないのではないかと憂慮している。

三つの命題

「部落差別の本質」「部落差別の社会的存在意義」「社会意識としての差別観念」が「三つの命題」といわれるものである。
これは、朝田善之助・元部落解放同盟中央執行委員長がご自身の実践と社会科学の理論とを結合させて創り上げたものである。
70年代に部落解放同盟全国大会で提起された。ちなみに初めての行政闘争といわれる「オール・ロマンス闘争」を指揮したのも朝田委員長である。


【部落差別の本質】
「部落差別とは、市民的権利が完全に保障されていないことであり、中でも就職の機会均等が保障されていない、すなわち、部落民は主要な生産関係から除外されていることが、部落差別の本質である」。
この理論から仕事保障が非常に重要であることがわかる。

しかし「市民的権利」とは?「主要な生産関係」とは?

【部落差別の社会的存在意義】
「現在の独占資本主義の超過利潤追求の手段として部落民を差別によって主要な生産関係から除外し、部落民に労働市場の底辺を支えさせ、経済的には一般勤労者の低賃金、低生活のしずめとしての役割を果たさせ、政治的には部落差別を温存助長することによって、部落民と一般勤労者とを対立させる分裂支配の役割を持たされている」。
ここに、共闘の意義がかかれている。
しかし「独占資本主義」とは?「超過利潤」とは?「労働市場」とは?

【社会意識としての差別観念】
「部落民に対する社会意識としての差別観念は、その差別の本質に順応して、日常生活の中で伝統の力と教育によって、自己が意識するとしないにかかわらず、客観的には空気を吸うように一般大衆の意識の中に入り込んでいる。」ここで初めて「無意識」でも差別することがある、その「無意識」こそ、問題であるという現在の差別糾弾の原則ができたことになる。しかし「意識」と「観念」の違いは?「空気を吸うよう」とは具体的にどういうことなのか?


一読しただけではなかなか理解しにくい。
しかし、ここに解放運動のあり方、めざす方向があるならば、理解しなければならないものである。
特にこれからの運動を担う若い活動家にとっては、ぜひ学習してほしい理論である。
部落解放同盟和歌山県連合会書記局には、若い活動家がこの「三つの命題」を学べるような環境・条件作りをしてもらいたいと思う。



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