狭山事件直後の石川さん宅の捜索は、1度目12人、2度目14人の捜査官がそれぞれ2時間以上かけて徹底的におこないましたが、何も発見されませんでした。それが、事件後2か月近く経った3度目の家宅捜索で「被害者のもの」とされる万年筆が石川さん宅の勝手口のかもいから発見されました。
このかもいは、床からの高さ175.9cm 奥行きは8.5cmしかない場所です。さらに室内はもちろんのこと、便所、天井裏、屋根裏、床下のほか、家の周辺で盛り上がっているところは掘り返すという徹底した家宅捜索を2度もおこなった後、3度目の捜索で発見されたことは不自然です。 ところが確定判決(寺尾判決)では、現場検証もおこなわないまま、「背の低い人には見えにくく、人目につきやすいところとは認められない」と2度の捜索で万年筆が発見されなかった不自然さを正当化し、石川さんに無期懲役の判決を下しました。 しかし再審段階になって、家宅捜索にあたった元警察官たちが「かもいに手を入れて調べたが何もなかった」「かもいにあるネズミ穴に詰めていた布を取って丁寧に調べたが何もなかった」と新たに証言しています。 このようなことから、「被害者の万年筆を盗み脅迫状を書いた」という石川さんの自白は真実ではなく、その万年筆が石川さん宅から発見されることはありえないのです。 |
『石川一雄さん宅から発見された万年筆の押収経過には疑問があり、自白の信用性を担保とする「秘密の暴露」があるとはいえないことを立証する新証拠』
報告者は、各警察署、県警本部で15年6か月捜査に従事した元警察官。県警察学校の教官を4年勤め、外勤などを6年6か月勤めたベテラン刑事です。その経験や捜査実務から、警察における捜査、差押えに関する教育・捜査、差押えの一般的な方法や留意点をふまえたうえで、狭山事件でおこなわれた石川さんの家宅捜査について所見を述べたものです。 異常・不自然な点の発見に努めること、かもい、天井裏、神棚など人の気づかないところに注意することなど、警察で捜査・差押えがどのように教えられ、実施されているかを詳細に説明。そのうえで、狭山事件における第1回、第2回の捜査とも、捜査の一般的な方法と留意点に従っておこなわれ、捜査の記録・写真から第1回捜査では脚立が使用され、第2回捜査では、玄関先の部屋と神棚とその付近の高所を捜索していることなどが指摘され、「当然勝手場においても踏み台や脚立の上に乗ってかもいを含む高所を捜索したものと考えられる」などの所見を述べています。 事件後におこなわれた2回の家宅捜索状況から、かもい上に万年筆があれば、これを見落とすことは考えられないと結論づけています。棄却決定がいうような、視点の位置や背が低いから見えない、といったことは警察の捜索活動では問題にならないとも指摘しています。 |