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世界人権宣言59周年記念
大阪集会に、参加して・・・
12月10日、大阪国際交流センターにおいて、世界人権宣言59周年記念集会が「職業と世系に基づく差別の撤廃・女性の視点より」をテーマに開催され参加してきました。

集会では、はじめに中央大学法科大学院教授横田洋三先生からの国連人権小委員会の「職業と世系」に基づく差別の撤廃に関する「原則と指針」の最終的な取りまとめを踏まえての講演があり、人権小委員会がこれまで行ってきた研究調査・基準設定・人権状況の審議などが進められてきているが、今後、このことを受けて、国連理事会・諮問委員会では研究調査だけが委員によって行われ「原則と指針案」は受け継がれないとおもわれる現状についての報告がされました。

また、講演を聞いて、「職業と世系にもとづく差別」の問題が国連で取り上げられるようになった理由が、日本の部落問題と深く関与していることが分かりました。そして、こらからの人権理事会への思いなどを聞き、今まで積み上げてきたものを無駄にしてほしくはないと思いました。

続いて、「世系」もしくは「職業と世系」に基づく差別を受けている集団の中の女性が置かれている差別の現状(複合差別)と解放への取り組みをテーマに3つの報告がありました。

一つ目の報告として「絶望にあっても闘いそして挑戦するダリット」と題し、インド・タミールナドゥ女性フォーラム代表ブルナド・ファティマさんから、インドでは、妊婦の死亡率、女児殺害と胎児殺しなど予防可能な疾病が死亡原因のトップであることや、1億6000人のダリットのほぼ半数の女性が、家父長制の犠牲にされ、他カーストの男たちによって身体が自由に支配され、権利と機会を奪われてきていること。また、経済や教育の構図の中で最底辺におかれ貧しく・無学・性的に脅かされている状態であることを聞きました。

カースト制度は、ダリット女性を「不浄」であり不可触であると断言し、社会的に排除している現実は、女性の権利の全面的な否定であり、カースト制度維持のためのバラモン(ブラーミン)の価値観やヒンドゥー経典は、男女平等社会という概念などが全くないように思いました。

ダリット女性の殺害が、動物の殺害と同等であり軽犯罪であると聞いたとき、私は憤りを感じました。このような状況に置かれていながらもダリットの文化を、革命的、刺激的、政治的行動につなげていっていることや、支配文化への抵抗には、ダリット女性の信念の強さが伝わってきました。こらからも、農村教育開発協会(SRED)やマタマ解放運動の活動の飛躍を私は願っています。

二つ目の報告として、「部落女性の現状と課題教育・労働・生活を中心として」と題し、部落解放同盟大阪府連女性部長の塩谷幸子さんから報告がありました。

 今日まで、被差別部落の環境や生活改善、差別糾弾闘争、教育闘争、政治闘争、狭山闘争などに関わってきた活動などを聞き、部落差別だけではなく、女性差別という二重の複合差別と闘ってきたことがよく分かりました。


三つ目の報告が、「セネガルのカーストその歴史とジェンダーの次元」と題し、セネガル・タガール大学イスラム史教授ペンダ・ムボウ先生からされました。 報告では、職業と生系に関わり、鍛治屋という職業が差別されてきたこと、そして、歴史的に社会地位の没落、カーストの人々(生まれや職業)への非難、婚姻問題、また一部のカーストの人びとが劣っていると見られている社会的地位を口実に、お金をねだるという状況や、自分自身の生まれを隠すために、名前を変え、自分たちの集団以外の人と婚姻するなど、差別と闘うことをしない状況があることを聞いて、差別から逃避していることは悲しいことだと思いました。 私は、今回はじめて世界人権宣言の記念集会に参加しました。カーストの幅広い意味を持つ言葉、そして、マイノリティの女性が様々な複合差別を受けている現状を知り、これからも人権問題に取り組む人たちと交流を深めるとともに、私を含め、様々な人々が男女平等社会の実現に向けて頑張っていかなければならないと感じました。

メモ

「職業と生系による差別」

 部落差別については、日本の歴史的過程でつくられた身分に起因する差別として、日本固有の差別問題であるとされてきました。しかし、部落解放運動の国際的な取り組みの中で、「生系(生まれ)」による差別がインドのカースト制を中心にインドや南アジアに存在することが明らかにされ、国連でも取り上げられる様になりました。さらに最近、アフリカ諸国にもこうしたことに類する差別の存在が明らかにされています。また、具体的な問題として職業差別とも深く関わっていることが指摘されており、国連では、部落差別やカーストはじめ、こうした差別問題を「職業と生系」に基づく差別として把握され、国連・人権委員会で差別撤廃に向けた取り組みがされています。  尚、国際的には、こうした差別問題を広い意味を含め「カースト」と表現されることが多い。

「ダリット」

 インドのヒンズー教に関わりつくられたカースト制度の最底辺におかれている人々。現在も尚、人間外の人間として、すべてにわたって過酷な差別を受けている。インド政府は、「指定カースト」として取り組みを進めているが実効が上がっておらず、最近もインド洋の大津波で壊滅的な打撃を受けている。また、インドを中心に、ヒンズー教の分布とともに広がっているカースト制度から逃れるために、イスラムや仏教をはじめとする他宗教への改宗運動が広がっているが、インド政府の「指定カースト」からの除外を含め、過酷な差別の現実は変わっていない。

「アフリカの事情」

アフリカ諸国の中でも、植民地時代以前に王国など国家形成されていた地域を中心に「生系」による差別の存在が報告されている。  今回報告されたセネガルにおいても「王国時代」に、「鍛冶屋」「歌楽や舞踊」に従事した人々とその関係者が被差別者として、迷信・宗教観(貴賎観)にも支えられ今日も尚存在している。

「複合差別」

差別問題に関わって、被差別マイノリティ(差別を受けている少数集団)の中におかれている「女性」は、さらに厳しい状況にあることが指摘されており、「複合差別」としての視点が重要視されている。

「反差別国際運動(IMADR)」

反差別国際運動(IMADR)は、世界からあらゆる差別と人種主義の撤廃をめざしている、国際人権NGO。日本の部落解放同盟の呼びかけにより、国内外の被差別団体や個人によって、1988年に設立されました。アジア、北米、南米、ヨーロッパの地域委員会/パートナー団体とともに、被差別マイノリティ自身による国境を越えた連携・連帯を促進しています。1993年には、日本に基盤を持つ人権NGOとしては初めて国連との協議資格を取得し、ジュネーブにも事務所を設置して、国連機関などへのはたらきかけにも力を入れています。

反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)は、IMADRの日本における活動の拠点として1990年に設立されました。特に被差別部落の人びとや、アイヌ民族、沖縄の人びと、在日コリアンなど日本の旧植民地出身者およびその子孫、移住労働者・外国人などに対する差別、また、それらの集団に属する女性に対する複合差別などの撤廃に取り組んでいる。

 その他の活動として、世界人権宣言記念集会や世界各地でのシンポジュウムの開催などを進めている。
http://www.imadr.org/japan/about/

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