この夏に再上映が決まった「ふるさとをください」に当事者として出演された雑賀良彦さんにお話をうかがいしました。

◆家に帰って・・・ Ｑ 仕事終わって何をされていますか？ 雑賀　 お風呂に入ってからスーパーカブで買い物に行く。 夕方になると、半額になるやろ。 そのほかは、テレビみたりJ-COMで野球見たり、入院中は９時に消灯やからテレビが見れやんかったから。 3年前、隣の家が火事になった。 夜中の1時頃、隣の台所から火が出てた。 風邪で寝てる嫁さん起こして、はよはよ逃げて周りの人に火事を教えた。 伊藤 夜中に火事になると一番怖いのは、睡眠導入剤を飲んでるから起きれないで亡くなる人も多い。 雑賀くんはよく逃げてくれたと思う。 雑賀 向かいの家が空いてたので、家を貸してくれた。 今は、電話機を買ったりレンジも買ったけど、冷蔵庫はまだ買えてない。 風呂がまと洗濯機は焼けなかった。 家事の時、裏をやぶって消防士が出してくれたから。 カブも焼けなかったけど、後ろに少し焦げた跡はあるけど。 家が焼けて何もなくなったけど「病院から退院してきたときと同じやわ」って思った。 伊藤 彼らは強いよね。 10年以上も入院していて退院する時にもっていた荷物は紙袋ふたつだけ。 番号の入った服と下着。 このクリーニングで働いていたら生活できるっていう目標があったから、火事で焼け出されてもこんなに強いんだと思う。 今じゃあ、退院してきた人の相談にものったりしてるんですよ。 自分もしてきた体験やから聞いてあげられる。 Ｑ 麦の郷という名称の由来は？ 伊藤 ある聖書の一説に「一粒の麦が地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば多くの実を結ぶ」とある。 多くの麦を取るために、一粒の麦が死ななければならない。という意味がある。 そんな話をしていて付けた名前。 前にＮＨＫが報道したいと要望があり、麦の郷のことをマーネージャーが「踏まれても、踏まれてもたくましく起き上がる意味をとったのですか」と。 私、その時に「そう変えるわ」と言った。 でもこの言葉、ここのみんなにぴったり。 伊藤 貯金はしてるの？ 雑賀 お金貯めて全自動洗濯機買って、もう少しましな家に住みたいし。 いっぺんにはいかんけど、少しづつね。 伊藤 ここは出勤率がいい。 なんで休まないのかな？と思って聞いてみたら「仲間がいるから」と。 Ｑ 休みは？ 雑賀 月に1回有給ある 伊藤 ほんまに休んでるの？ 雑賀 イズミヤに行ったり、ラーメン食べに行ったり。外食ってあこがれですよね。 鍵がかかった病院に閉じ込められてたんやから。 Ｑ 社会に訴えたいことは？ 雑賀 精神障がいは怖くないから、退院できる人は退院して働いて、一人でも多くの人が地域で暮らしてほしい。